黒部の名水の源となる黒部川は、北アルプスの中央部に位置する黒部奥山の鷲羽岳に源を発し、立山連峰と後立山連峰の間に2,000m近くにも及ぶV字形の深い谷を刻み、急勾配の中を短時間で北流している。水に溶けにくい硬い岩の間を流れるため、その水質はカルシウムや鉄などの成分が少なく、軟水であり、清らか。
また、黒部奥山に降る雪は、高地のため夏になってようやく溶けるため、真夏の渇水期にも豊かな水量をもたらしている。高い山は、いわば自然のダムとなっている。 黒部川は、愛本(宇奈月町)を扇の要とし、典型的な扇状地を形成している。扇頂から扇端までの距離が13.5km、扇頂角60度の典型的な扇状地としては、日本一大きなものである。水量は、愛本で年間28億トン、そのうち約14億トンは発電兼灌漑用に分水され、残り14億トンは黒部川本流に流れるが、それぞれの一部は共に広い扇状地内で地下水となり浄化される。地下水は、扇央部では、飲料水などの生活用水や工業用水に使われ、扇端部では、湧水や自噴水となり、その一部が「黒部川扇状地湧水群」となっている。